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   町内会とお祭り 
             2000/9/3


 日曜日、地元の床屋に行ったら客が居ず、店内はひっそりしていました。「おねがいします」と少し大きな声で店内に入ったら、店主が何かを読んでいて、少し慌てた風に立ち上がって「どうぞ」と応対してくれた。
 店主が言うには、今日は町内のお祭りで、夕方からカラオケ大会に出席しろと言われて、今必死に歌詞を覚えていた、という。
 私はこの町内に住んで15年ほどになるが地元のお祭りにまだ出たことはない。
 店主は歌は得意ではないそうで、しかし出る以上練習も少しやらねばなるまいと言うことで、昨夜カラオケバーに出かけて練習したらしい。練習するうち、バーの経営者も客も盛んに拍手と声援を送ってくれたので、ついつい得意になって、客達のお酒代も奢ったそうです。練習はそれで良かったのですが、会計の段になると、自分の見積もりの2倍以上掛かって、1ヶ月の商売の儲けが飛んでしまった、とぼやいています。
 想像するにバーの経営者も近頃の不景気で客の入りが悪く、何だかんだとレシートに書き付けて請求して売り上げを増やしているようだと、不満顔でした。

 さてその続きですが、店主は歌が上手くないのは自覚していて、「うちの母ちゃんは絶対止めて」なんて言うので、店主は考えて、歌がだめでもパフォーマンスで勝負、とばかり、「ドス(刀)とススキ」を用意して、振り付けで注目を引こうと考えました。玩具屋に行ったけれど、今は刀が棚に無くて、ススキはまだ生えていなくて、それでススキに似た草とこうもり傘を用意したそうです。
 「まあ、後は、しらふではとても舞台に立てないので、少し前から酒でも引っかけて出かけるつもりだ」そうです。
 そんな話をして言るとき、店主は時々笑うので、私も笑ったけれど、眉毛を剃り落とされないか心配になりました。
やがて客も増えてきて、いろんな地元らしい話を聞きました。
 「先日婆さんが亡くなってね、近くのお寺に読経を頼んだら、戒名抜きで80万円だと言うんです。直ぐに翌日は葬式に迫っててね。親戚の一人が、80万円は高いや、おまえ和尚に少しは安くならないか掛け合ってみるべきだという。最近は誰だって不況で実入りが少ないんだ、そりゃ、オメエさんも大変だろうというので、ただし和尚に会ったら、そのときは柔らかく、言葉には気をつけて言うんだぞと注意されて、お寺に出かけたんです。」
 「そしたらね、お内儀さんが出てきて、ちょっと相談してきます、と言って中へ入って、相談している暇もなく直ぐに又出てきて、その早さからすると話は最初からできていたみたいで、そのようなこじれるような時は、当寺ではお断わりしています、是非余所のお寺を探してください、と断られてしまったんです。しかしこちらは、既に町会や親戚に連絡してしまっていて、今更日延べする訳にもいかず、本当に困ってしまって。
 そこであたしはそのお内儀さんにお説教させて貰いましたよ。坊さんというのは困った人を助けるのが本来の勤めではないんですかと。私はお寺にお説教したのは初めてですよ。
で、とにかく、金額はそのままで、今回特別に出かけましょうと、坊主が折れてくれたんです。」
 私は聞いていて、自分の経験を言いました。「京都では普通、お寺から幾ら出しなさいとは言わないですよ」と。
 そしたら、「そら、京都はお寺がそこら中にあって、競争があるからではないでしょうか」と返事が返ってきました。
 このときも床屋の主人が、からから笑ったので、私は又鏡の顔を見て眉毛があるのを確かめました。
 「そしてね、当日上げて貰ったお経の声がとても小さくてね。最初から最後までお経の帳面から目を離さないで、まるで教科書を懸命に読んでいるみたいでね、ちっともありがたみがなくてね」
 
 こんな風に、久しぶりに行った床屋で面白い話を聞きました。
 本当のことを言うと、私なんか髪の毛は人様よりほんの少し少ないので、駅傍の安いところを利用したいのが、本音です。そこだと1800円。地元だと3500円。ここのところを床屋で話しかけたけど、これは本当に眉毛が無くなりそうなので止めました。

 これには少し続きがあります。
夕方近くの神社に、たまたま来ていた孫や家族と一緒に行きました。ここの町内会では年会費2400円の会費を払っています。その中から、今日のお祭りには300万円出るそうです。
 東急が走っている表側の1・2・3丁目ではなくて、私の住んでいるのは山二つ越えた裏側です。裏側は4・5丁目と言います。地元の古老によると、ここらを「崖下部落」と呼んでいます。その謂われは山の裏側にあるという意味でしょう。地元からすると山は北側に位置し、南側は多摩の河川敷が広がり、温暖で乾燥した場所だそうです。そこで以前はお花畑や牧場や、川では投げ網をして生活を営んできたところです。
 私は土地が騰貴する少し前に引っ越してきました。そのころはまだ崖裏の鬱蒼とした藪の中に釣り堀があったりしました。でも数年で土地が上がり釣り堀も消えました。
 その真ん中に商店街があり、小さいけれど買い物には大変便利です。

 しかし昨年駅構内に大きなスーパーができ、ここの商店街が大打撃を受けているそうです。サラリーマンは仕事の帰りにそのスーパーで買い物をするから、地元の商店街の売り上げがさっぱりになってしまったのです。今年の春1軒有った魚屋が無くなりました。
 残った有る店の女将さんが言うには、年取った人達は山二つ越えて買い物に行けないでしょう、だから私達は昔世話になった人達のために店を開いているんですけど、でもいつまで続くでしょうかね、と。

 こんな小さな人口の少ない地域ですが、さてその御神輿を見てびっくりしました。とても可愛らしくて、それをたぶん全員50歳ぐらいの商店街の店主の人達が15人ほどで、威勢良く担いでいました。私は見ていて本当に気の毒になりました。たぶん明日の仕事は、全部女将さんしか店に出ないだろうなと想像します。
 聞くところによると、御神輿のない町内会も日本には幾つもあるとかで、こんなに小さくて担ぎ手が年寄りでも、形としてあるだけ、ここはましではないかと思いました。
 しかし町内のお祭りを支える人達がこれからどうゆう風に増えるのか、気になるところです。
9/2
  

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